四月も中盤。
昼間の気温は20度まで上がるようになり、過ごしやすい気候となった。
そんな行楽日和の今週末。
伯母と二人で山口の長門峡および島根県の南西に位置する津和野というところへ出かけた。
本来なら九州旅行の準備を進めるべきではあった。
実際、土曜日に外出したものの有益な情報源を入手できていない。少しまずい。
しかし、伯母から日曜日の朝に掛かってきたお誘い電話を断ることはできず、のこのことついて行ってしまった。
後悔はないが、我ながら九州旅行が破綻してしまわないか不安だ。
何はともあれ、せっかくの日帰り旅。
日曜日の朝、家を出てまずは長門峡へと向かう。
長門峡を散策してみた。
長門峡は、国と県から「名勝および天然記念物」として指定されているらしく、山口の名所の一つに挙げられている。
以前、山口の観光地を調べた時に出てきて、いつか行ってみたいとは思っていた。
長門峡についたのは11時頃。
ペットのワンコも連れて、遊歩道を散策してみる。
思いのほか大きい渓谷らしく、全制覇していたら片道だけで1時間半かかるとのことだったので、今回は途中まで行くことにした。
とりあえず、道の駅 長門峡を起点に入谷。
歩きはじめて早々、やはり街中とは空気の質も気温も違うことに気づいた。
峡谷は当然のことながら山に囲まれており、森林浴が楽しめる。マイナスイオン浴び放題だ。
長門峡を作り出した阿武川もかなり綺麗な水質らしく、鮎やウナギの無許可獲りを禁止する看板なんかも立てられていた。
歩道はコンクリートで舗装されており比較的歩きやすい。
しかし、思いのほか起伏が激しく登山しているような感覚にもなる。
歩き始めた当初は、山中かつ水際であることもあって風が少々肌寒かったのだが、歩いているうちに身体が温まってきて、ちょうど良くなってきた。
道は良い意味であまり整備されておらず、歩道に岩がせり出してきているところもあって、体を傾けたり頭をすくめたりしながら進む必要がある。
道幅もあまり広くはなく、二人並んで歩くのも少し狭いくらいだ。
まさに崖に沿って歩いている感じ。
あたりには、街中ではまず見かけないシダなどの植物も生えていた。
大学生の時に、富山の黒部渓谷に行ったことがあるのだが、そこに似ていると感じた。
しばらく歩みを進めていくと、同じ川でも色々と表情があることに気づいた。
ゴツゴツとした岩場があったりカッパでも住んでいそうな静まり返った淵があったりする。
秋の紅葉シーズンは特に人気で大勢の観光客が訪れるとのことだったが、今の時期はあまり人通りは多くなく、ゆったりと歩くことができた。
ちょうど山桜の散る時期にあたったらしく、歩いていると何処からともなく桜の花びらが舞い落ちてきた。
ウグイスの鳴き声も聞こえてきて、すごく癒される。
都会の喧騒を離れて、存分に自然を堪能することができた。
あまり奥まで行ってしまうと戻ってくるのが大変なので、片道40分ほど歩いて道の駅に引き返すことにした。
道の駅に着くと、ちょうど新山口駅から走ってきたSLが見えたので撮り鉄や家族連れに混じって見てみることにした。
走っている蒸気機関車を見るのははじめてかもしれない。今まで見たことあるのは、展示されてある古びたものばかりだったように思う。
かなりの遠くからでも汽笛が聞こえてきて、重量感もすごい。
ただ、写真を撮ることばかりに気を取られてしまって、肉眼でちゃんと走っているところを見られなかったのが残念だ。
黒煙を吐きながら走る蒸気機関車は、レトロでありながら非常に逞しい姿をしていた。
初やぶさめ!
道の駅を出て、今度は島根県の端にある津和野という所へ向かった。
伯母によると、そこで流鏑馬が見られるのだという。
着いたのは鷲原八幡宮。
決して大きな神社ではないが、流鏑馬専用道みたいなのが境内にあって、近くに行くと武士の格好をした人に馬が3頭それぞれに引かれていた。
小雨の降るなか、流鏑馬コースの前で何分か待っていると、甲冑や装束に身に包んだ人たちが鳥居の奥から出てきた。
大名行列のように、流鏑馬のスタート地点からゴール地点までを練り歩いていく。
馬のいななく声がカッコいい。
開始の儀式が始まった。
流鏑馬コースはかなり長く、スタート地点で行われたという「扇を投げる儀式」は見られなかったが、社に向かって選手宣誓みたいなことをしているところは見ることができた。
二人の武士が出てきて
「流鏑馬を始めようぞ」「おう」
みたいなことを、神主を前に言っていた。
そうこうしているうちに、さっそく流鏑馬開始。
馬がどかっどかっと音を立てながら駆けていき、その馬上で騎手が「陰陽、陰陽」と言いながらバシュッと矢を射ていく。
コースには3つの的があり、当たるとスコッという音とともに綺麗に板が割れる。ちなみに、その割れた板はかなりの縁起物で、買って飾る人もいるのだそうだ。
流鏑馬は明治期に一度廃れたものの、戦後再び復活したのだという。
流鏑馬を見るのは初めてだったし、伝統的なカッコいいものを見られて本当に良かった。
わざわざ宮崎から来た馬や、フランスから来た騎手などもいて、それぞれに頑張っていた。
このあたりでは、ワサビが有名らしく屋台でワサビ菜入り稲荷寿司が売られていたので、それを購入して八幡宮を後にした。
整然と鳥居が並ぶ太鼓谷稲成。
次に向かったのは、太鼓谷稲成。
伏見稲荷の分社とのことで、鳥居が沢山並んでいる。さながら、伏見稲荷のミニバージョンと言った感じだろうか。
ちなみに、「いなり」と名のつく神社は全国に多数あるものの「稲成」と書くのは、ここだけなのだそうだ。
山の麓から、鳥居がズラーッと並び立つ山道を5分ほど登っていくと、社殿が現れる。
かなり整った神社で、わりと大きな〆縄も取り付けられていて、出雲大社を彷彿とさせる。
実際、〆縄と直接の関係はあまりないのかもしれないが、イザナミノミコトが祀られているらしい。
年に2回ほど、伯父は商売繁盛を祈願してここへお参りに来るのだそうだ。
とりあえず、神様に参拝し山の上から津和野の街を一望した。
車で社のすぐ近くまでくることはできるが、個人的にはあまりおすすめはしない。
せっかくなら、しんどい思いをしてでも長い鳥居道を抜けて、景色を楽しむべきだろう。
簡略バージョンとは言え、整然と並ぶ鳥居は一見の価値がある。
また、神社からは川沿いに走る道路や線路を眺めることができ、けっこう景色がいい。
近くには森鴎外の旧家もある。意外と立派なお屋敷だ。
記念館には入らなかったが、鴎外が津和野出身ということを知れただけでも十分だ。
願いが叶う⁈願成就温泉
山を下りると、最後に願成就温泉という所へ向かった。
その名の通り、願いが叶う温泉として人気の観光地とのことだ。
ふと建物の脇に目をやると、昔の女性の像が立っていた。
どうやらこの辺りは、静御前の生まれ故郷でもあるらしい。
近くにはお墓もあるとのこと。
静御前については、子供のころ親と一緒に少しだけ観た大河ドラマ「義経」でぼんやりとしか知らないのだが、そばにあった立て看板で大体の経歴を知ることができた。
この近辺は、意外と有名人が多いらしい。
静御前についてのお勉強タイムはそこそこに、さっそく道の駅内にある温泉へと向かう。
周囲が山に囲まれているので、露天風呂に入っていると鳥の鳴き声がよく聞こえる。
姿こそ見ることはできなかったが、湯に浸かりながらすぐそこでウグイスの鳴き声を聞くことができる。
まさに、自然のBGMだ。
水温も熱いのと、ぬるいのがあってどちらも楽しめる。
水質はよく分からないけど、まあ良さそうだ。サウナもあって気持ちが良かった。
山奥で気温が低いせいか、このあたりではまだ桜が咲いており、おそらく今年最後に目にすることになるだろう桜を見ながら津和野を後にした。
いよいよ、再来週はGWだ。
九州旅行の準備もそこそこに、また一週間がんばろう。