「大人」とは何だろうか。
自分の行動や人生に責任を持つこと?
理性的に紳士的に道徳的に振る舞えること?
以前、TVのバラエティ番組で「大人になったなと思う瞬間」をテーマにトークが繰り広げられてるのを観た。
自分の場合、ガソリンスタンドで「レギュラー満タンで」って言うのが大人っぽいなあ、なんて考えたりしたわけだが、実際のところ「大人」の定義は曖昧だ。
事実、大人でないと出来ないことや入れない場所もある。
それができるようになったことで、インスタントに自分の「大人っぽさ」を感じられたりもする。
心理学にも通じる話ではあるけれど、立場としての役職を演じているうちに「その人」になっていく、というのはよくある話だ。
それが先生だったり親だったり、あるいは監獄職員だったり…。
「大人」に関しても、そうこうしているうちに、ひとを大人たらしめていくのかもしれない。
閑話休題。
この夏、少し大人の階段を上がってみた。
別に「子ども」でも出来ないことではないし、早い人はとっくに卒業している。
なんなら自分の年齢からすれば一般的には遅すぎることのようにも思える。
けど、個人差は当然あるし気にするようなことではない。
大事なことは、「初めて」を経験して自分の新しい世界を広げていくことだと思う。
中洲に連れて行ってもらった
去年の秋頃から、毎週のようにとある農家さんの手伝いに行っている。
そこでは、草刈りやら家の解体やら建築やらと、自分にとって目新しいことが多い。
かなりお喋り好きなご主人がいて、たまに会話に疲れるけど、何度か話しているうちに、キャンプとか海水浴とかに誘ってもらうことが増えた。
子どもさんがいるので、その子たちと遊ぶのも結構楽しい。
そんななか、8月の初旬に福岡の「夜の街」へ遊びに行こうと誘われた。
ずっと行きたいと思いつつ、ひとりで行くのは流石に気が引けていたので、「これは渡りに船だ」と思いつつ話に乗ることにした。
実際はお流れになるだろうと思いつつ…。
けれど、今回はそんなことはなく本当に向かうことになった。
事前に途中で立ち寄った薬局で精力剤を入手して、意気揚々と向かう。
中洲に着くとさすが都会。
くそ田舎の山口とは大違いで、あちこちに人や車が大賑わい。
自然とテンションが高まってくる。
目的地に着くと、ちょっと怖そうなお兄さんがさっそく話しかけてきた。
2、3軒ほど店を覗いてみたものの、着いた頃には少し時間が遅くなってきていたので、わりと適当に決めて入店した。
待合室のTVには、ONE PIECEの映画が流れていた。
ちょうど新作映画が公開された時期だったので、放送されていたのだった。一応、自宅でも録画してある。
けど、こんな所でルフィとはあまり会いたくなかった。少年の心しかないルフィと自分を比較してしまい複雑な気分だ。
なにせルフィとは幼稚園時代からの付き合いだ。
自分にとって、ある意味で過去の生き鏡みたいなもの。
じゃあな、ルフィ。
お前とは別の、新世界に行ってくるわ。
そして、さようなら。いままでの自分。
ルフィは「イクぞー‼︎」と言って、そのまま敵を倒しに行ってしまった。
当方もイッて参ります。
そうこうしているうちに声が掛かった。
上のフロアに上がる。
すると、話しかけてくる女性がひとり。
これからお世話になる相手だが、これは…。
そこにいたのは化粧お化けだった。
大人の階段を踏み外す
若い子を希望していたものの、どうやら同い年らしかった。
んー、まあいっか。年増よりは良い。
あまり化粧が濃いのは好きではないのだけれど。
部屋に入りしばし歓談。
意外にも冷静な自分がいる。というか冷静すぎる。
あまりに自分が平常心すぎて逆に不安になる。こんなんで大丈夫か?
5分ほど経ち、そろそろと準備をしていても全然反応がない。
なぜか気分的に全く盛り上がらない。
しかし、ことを始めると少しずつ整ってきた。物理的に。
さっそく新世界に触れてみると、想像とは違うことがけっこうあった。
良くも悪くも。
こんなもんかーと思う部分もあったものの、けっきょく最後までいまいち気分は乗り切らなかった。
自分で自分を「何しとんやろ」って俯瞰してしまう、いつもの癖がついつい出てしまった。
そのせいか、残念ながら達成感を得ることはできなかった。
これで「大人」になれたと言えるのだろうか…。
まあ、気分的な問題だけの話とは思えないけれど。
とはいえ、結果的には良い社会勉強になったと思う。
なんなら、そのあと行った屋台の方が楽しかった。
沖縄出身の可愛い女の子と話せたし。
何はともあれ、経験に勝るものはない。
今回は不完全燃焼で終わってしまったけど、次回また挑戦すれば良い。
そもそも一回ぽっちの経験で分かるものなんて知れている。
一応、幸か不幸か魔法使いになる道は断たれたわけだ。
かなしいかな、「普通の大人」として生きていくことになってしまった。
けれど、これからも挑み続けていきたい。